猛禽類アセスメントの実態(第二回分/全3回) | |||
高速道路調査会誌「高速道路と自動車」原稿 グリーンムーブメント 阿部 學 猛禽界に神話が生まれ定説化するのは、国に野生鳥獣の研究機関がないためデータが生産されず、その上神話を検証できないからである。トキ、カワウソの絶滅、シカ、イノシシの爆発的増加はデータなしの鳥獣行政の産物である。私は永年猛禽類と付き合ってきたせいか猛禽委員会に招請されるが、そこで錚々たる専門家の神話に遭遇するたびに科学的データの必要性を提言してきた。
月に数日間の目視に比べGPSの位置情報は365日24時間の情報が居ながらにして毎日パソコンに届くので年間千点超の位置情報が得られ、GIS解析を行うと対象種にとって意味のある植生、地形、標高などが浮き彫りになり事業の予測/評価に貢献する。何よりの利点はアセスに利用可能な定量的なデータが得られ、しかも受信料は年間に数十万円で済む。ただ、GPS調査を各事業地で展開することは想定していない。植生区分帶ごとにモデル地域を設けて調査を行い、その成果を各事業地に援用すればよい。
最後に目視観察が無用の長物とはいわない。ただ飛跡図はアセスには使えないので,年間数千万円の税金投入に値する別の利用法を考えることをお薦めしたい。そもそも「猛禽類保護の進め方」をアセスのマニュアルと誤解している向きが多いところに猛禽類の悲劇がある。 2013年1月号Vol.56(2):24-24. |